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安楽寺本堂厨子
安楽寺本堂厨子
愛知県稲沢市
年度………XXXX年
施工内容…
室町後期と推定される厨子は稲沢市の指定文化財。入念な復元作業により往時の佇まいを復興。
安楽寺は、もと観音寺と称し、創建の頃は天台宗で国分寺の支院だったとされ、のちに妙興寺開山の滅宗宗教が中興して寺名を安楽寺に改め、臨済宗に転じたとされます。明治24年(1891)の濃尾大震災で本堂が倒壊したため、古材を用いるとともに旧規によって明治43年、再建したのが現本堂であると言われています。本堂には木造十一面観音立像や木造阿弥陀如来、木造釈迦如来(いずれも重要文化財)などが祀られ、その内々陣的部分の須弥壇上に箱壇を重ねて、前記観音立像を納めた厨子が安置されています。厨子の造立年はさだかではありませんが、絵様装飾のうち特徴的な頭貫木鼻から室町後期と推定されます。間口3尺、奥行2尺の小厨子ですが、禅宗様によって仕事は綿密になされており、昭和54年、稲沢市の指定文化財に指定されました。
破損状況は軒廻り、柱、壁その他全体に塗装の剥落が著しく、また、木製本瓦および垂木の破損・欠落があったほか、一部欠損もみられました。造立以降の改造・修理の経過は明確でありませんが、背面軒撤去、扇垂木を平行軒に変更、地垂木取付高さの変更、側面茅負の内転びの4点の改造が推定されました。腐朽・破損部は埋木などで繕いを施し、見え隠れに忍釘止めを行いました。彩色剥落止めとしては、全体の埃を柔らかい筆などで払い、汚損箇所を蒸留水で筆・ガーゼなどを使って除去。剥落し、浮いている箇所へは膠水および布海苔水を注射器で注入し、彩色層と板面の間に浸透させたのち、スポンジで軽く圧着させるなど、材料検収から仮設工事、木工事、塗装にいたるまで入念な修理がなされました。
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